B型肝炎 – 予防接種
1. 予防する疾患・感染症
B型肝炎ウイルスは、感染力のあるウイルスを持った人(キャリア)の体液や血液を介して感染します。本来、免疫応答(病原体を駆除するための生体反応)が十分あれば、感染は一過性で(急性肝炎)、ウイルスは排除されますが、免疫が未熟または弱い場合はウイルスが体の中に残り、一見健康でもキャリアになってしまいます。また、キャリア状態から慢性肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと進展することもありますし、キャリアからそのままがんを発症することもあります。
シンガポールを含めた東南アジアでは、人口に対するキャリアの割合が高いため、感染の機会はそれだけ高くなります。特に免疫が未熟な新生児や乳幼児は高率にキャリア化するので、シンガポールでは生直後からの定期予防接種に組み込まれています。日本でも2016年10月より定期接種対象となりました。なお、シンガポールには、B型肝炎をターゲットとしたワクチンには、B型肝炎単独ワクチン以外に、6種混合ワクチン(DPT-IPV-Hib-HepB)やA型肝炎・B型肝炎混合ワクチンがあります。
6種混合ワクチンは、乳幼児期に使うことで効率よく他のDPTなどと一緒に免疫をつけることができます。一方、まだB型肝炎の予防接種をしていない年長児や成人に対して、A型肝炎への免疫を同時につける意味でも、A型肝炎・B型肝炎混合ワクチンでの接種を勧めています。
2. 日本:定期接種 シンガポール:定期接種
3. 接種時期および接種回数
生直後から接種可能。標準的な打ち方は1回目と2回目を1ヶ月、2回目と3回目を5ヶ月から6ヶ月開けた合計3回接種。A型肝炎・B型肝炎混合ワクチンを使用する場合は、医師にご相談ください。
4. 接種方法
日本では皮下注射
シンガポールを含む他の国では筋肉注射
5. 効果の持続期間
一般にワクチンの効果は、対象となる病原体に対する血中の免疫抗体がどれだけできているかで判定できますB型肝炎ワクチンの効果持続期間は約15〜20年と言われていますが、その抗体価の持続には個人差があり、実際に規定の回数を接種しても抗体価が高くならない人もいれば、最初高値だったのが次第に検出できなくなってしまう人もいます。
抗体価は必ず測定しないといけないものではないですが、もし、健康診断で調べた時に以前高かった抗体価が検出感度以下になってしまっていても、ワクチンの打ち直しは不要とされています。なお、B型肝炎ワクチンは幼少期に打つほうが免疫がつきやすいと言われています。
6. その他
B型肝炎ウイルスのキャリアの母親から生まれた児に対しては、日本もシンガポールも感染予防措置が取られています。すなわち、出生後できるだけ早くにB型肝炎ウイルスに対する特異的免疫抗体とワクチンを別々の場所に注射し、その後、引き続きワクチンを生後1ヶ月、6ヶ月に接種します。また、3回目の接種から3ヶ月から4ヶ月くらいあけて、感染や免疫獲得の有無を血液検査にて確認します。そこで抗体が十分に出来ていない場合は、通常の3回接種(上記 3)を1回目からやり直します。