ヒトパピローマウイルス(HPV) – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

このワクチンは、日本では「子宮頸がんワクチン」とも呼ばれていますが、正式名称ではありません。しかしながら、この目的は、子宮頸がんの発生を抑制することにあります。子宮頸がんは、子宮頸部と呼ばれる子宮の出口より発生するがんのことであり、日本では一年間に約10,000〜15,000人の女性が発症し、毎年約3,500人が亡くなっています。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が強く関与していることがわかっています。

HPVは、「乳頭腫」といういわゆる「イボ」ウイルスの一種で、中でも16型と18型の感染が子宮頸がんの主な原因と言われています。これらのウイルスは性交によって感染しますが、感染自体は珍しいことではなく、性交歴のある女性の50〜80%が生涯に一度はHPVに感染すると報告されています。この場合、感染しても90%以上の人ではウイルスは自然に排除されますが、一部の人で長期にわたって持続感染が起こり、がんが発生してくると考えられています。

従って、これらのウイルス感染を防ぐことが重要であり、子宮頸がんは『ワクチンによって予防し得るがんである』というのが最大の特徴です。がんの原因とされている全部のウイルスの種類をカバーしているわけではないので、当然ながら併せて定期的に子宮(頸)がん検診を受けることが必要です。

接種対象者は、通常初交前の女性になりますが、海外では男性も対象にしている国もあります。ワクチンにはCervarix®とGardasil®の2種類があり、子宮頸がんの発症を60〜70%予防することが期待されます。Gardasil®の方には、外陰部にできる尖形コンジローマというイボの発症予防効果もあります。当クリニックではCervarix®を取り扱っておりますが、接種希望の方や接種を悩まれている方は、まずは医師にご相談ください。

2. 日本でもシンガポールでも定期接種

3. 接種時期および接種回数(Cervarix®)

日本では小学校6年生から高校1年生の女性、シンガポールでは9歳から26歳までの女性。推奨年齢を過ぎていても、また初交後であっても接種自体は可能。
Cervarix®は9歳から26歳が対象。1回目と2回目が1ヶ月、2回目と3回目が5ヶ月開けて合計3回接種。

シンガポールと英国では、9歳から14歳未満は6ヶ月間隔で2回のみ、14歳以上は上記の合計3回接種。

4. 接種方法

日本でもシンガポールでも筋肉注射

5. 効果の持続期間

約20年

6. その他

ワクチン接種対象年齢が、(このワクチンに限らず)注射による心因性反応を含む血管迷走神経反射性失神があらわれやすい年齢であるため、接種後の失神による転倒などには注意し、接種後30分程度は様子を見ることすることが望ましいとされています。他のワクチンでもこのような反応が起こりやすい方は、あらかじめ医師にご相談ください。

HPVワクチン接種後に、慢性の痛みが続く複合性局所疼痛症候群(CRPS; Complex Regional Pain Syndrome)や持続する強い疲労が生じる慢性疲労症候群(CFS; Chronic Fatigue Syndrome)などの報告があり、ワクチンとの因果関係が日本国内・国外の専門家によって検討されました。

欧米各国の専門機関やWHOからは、因果関係が否定された報告が出ていますし、ワクチンの安全性も再確認されています。日本でもワクチン接種後の有害事象(副反応を含む)の発生状況を対象疾患予防の有効性と比較した場合、定期接種の実施を中止するほどリスクが高いとは評価されませんでした。

しかし、日本においては、ワクチンとの因果関係を否定できない事例もあることから、このような事例の発生頻度や科学的根拠がより明らかになり、国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではないという措置が一時的に取られています。シンガポールでは普通に接種は行われていますし、特に社会的問題になるような事例も報告されていません。従って、接種自体が禁止されているわけではないので、どうしようか悩まれている方やご希望の方は医師にご相談ください。

予防接種の目的を考えれば、初交前の思春期の子どもが対象となりますので、HPVワクチン接種の際には、保護者の方は年齢的にも家庭での性教育も併せて行うことが望ましいです。

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