MMR(麻疹、おたふくかぜ、風疹) – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

MMRにより、麻疹(Measles)・おたふくかぜ(Mumps)・風疹(Rubella)の3つの病気を予防します。日本ではMR(はしか・風疹)を使用し、おたふくかぜワクチンは別に任意接種となっています。

麻疹は医療が進んだ現代においても命に関わる怖い感染症の一つで、長時間空気中を浮遊した麻疹ウイルスを呼吸によって吸い込むことで感染するため、患者と同じ部屋の中にいるだけでも感染します。高熱とカタル症状(鼻水や咳、目やになど)、汚い色素沈着を残す発疹を主症状とし、重篤な肺炎や脳炎を合併しやすいことで知られています。中には、麻疹にかかった後7~10年後に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という中枢神経疾患を発症することもあります。

未予防接種の学童や青年が感染した場合、非常に重症化しやすく、後遺症を残すことも少なくありません。日本は先進国の中でも麻疹患者の発生率が高かった時期がありましたが、国を挙げて予防接種促進運動に取り組んだ結果、2015年に世界保健機関西太平洋地域事務局により、「麻疹の排除状態」と認定されました。シンガポールにおいては、麻疹はジフテリアと並んで法律で予防接種が義務付けられていますが、1回接種のみで麻疹にかかった1歳台の患児が多かったことから、2011年より、2回目の接種を従来の4~6歳から1歳台(1回目の接種から3ヶ月以上あける)に前倒ししました。

風疹は風疹ウイルスの感染で発症します。3〜4日間の発熱・リンパ節腫脹・皮疹が主な症状で、小児では大抵軽く終わりますが、脳炎や血小板減少性紫斑病を合併することもあり、軽視はできません。また、成人で発症した場合、高熱や発疹が長く続いたり、関節痛を認めたりして、小児より重症化することがあります。

特に、免疫のない女性が妊娠初期に風疹にかかると、ウイルスが胎児に感染して、先天性心疾患、難聴、白内障を3症状とする先天性風疹症候群 の子どもが生まれる可能性があります。従って、公衆衛生的に予防接種が非常に重要な意味を持つ感染症です。

おたふくかぜは別名、流行性耳下腺炎と言います。ムンプスウイルスによる感染症で、その名の通り、両方またはどちらかの耳下腺が腫れ、人にうつる病気です。その他、唾液を分泌する腺組織(舌下腺や顎下腺)も腫れることがあります。痛みや発熱を伴うこともありますが、はっきりしないことも多いです。

症状が出ない(不顕性感染)場合も30%ほどあります。一見、軽症に思われますが、無菌性髄膜炎を約50人に1人の割合で起こし、約1,000人に1人の割合で重度の難聴になることもあります。また、膵炎や精巣炎を起こすこともあります。日本はまだ「1回の任意接種」状態であり、世界的には感染予防対策が遅れています。

シンガポールでは、MMR以外にMMRV(MMRと水ぼうそう(Varicella))という混合ワクチンもあり、水ぼうそう(ホームページ内該当箇所)に対する免疫も同時につけることができます。

2. 日本:定期接種(おたふくかぜは任意接種) シンガポール:定期接種

3. 接種時期および接種回数

生後12ヶ月から接種。シンガポールでは通常12ヶ月と15か月(1回目から3ヶ月以上あけて)。日本では、MRを生後12ヶ月と5〜6歳に接種。

4. 接種方法

日本でもシンガポールでも皮下注射

5. 効果の持続期間

1回の接種のみだと約10年。日本のデータですが、追加接種により40年から50年と言われています。シンガポールルールだと、12ヶ月と15ヶ月の2回で終了になりますが、その後、日本に帰ってから5~6歳に公費負担で3回目を受けることは健康上問題なく、むしろその方が確実に免疫がつくと考えられます。

6.  その他

麻疹に対する免疫が十分にない人が麻疹患者と接触した場合、接触後3日以内であれば緊急ワクチン接種により発病を予防できる可能性があります。当クリニックには麻疹単独のワクチンはありませんが、MMRで代用可能です。結果的におたふくかぜや風疹の予防接種の回数が多くなっても、健康上、全く問題はありません。

同様に、当クリニックには風疹単独のワクチンはありません。成人で風疹の予防接種を希望される方は、MMRで代用可能です。

おたふくかぜ単独ワクチンはありますが、予めクリニックにご連絡いただく必要があり、入荷までに最低3週間を要します。これも、MMRで代用可能です。

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