ロタ – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

急性胃腸炎を起こすウイルスはたくさんいますが、中でもロタウイルスによるものは非常に重症で、典型例では高熱と嘔吐で始まり、すっぱい臭いの白い下痢便が頑固に続きます。このため、別名「乳児白色下痢嘔吐症」とも言います。乳幼児ほど脱水になりやすく、点滴治療のために入院を必要とする場合が多いです。また、原因はわかっていませんが、繰り返すけいれんを伴いやすいと言われています。

患者の排泄物や吐物からのウイルスが人の手を介して経口感染しますが、このウイルスは環境中に安定して存在し強い感染力をもつため、家族や施設内などで大流行しやすい胃腸炎です。特別な治療法はないため、予防接種が唯一の対応策となります。ワクチンは胃腸炎の重症化を約90%防ぐと言われていて、事実、シンガポールではこのワクチンが導入されてから、重症例数が激減しています。WHO（世界保健機関）は、ロタウイルスワクチンを子どもが接種する最重要ワクチンのひとつに位置付けています。

ロタウイルスワクチンにはRotateq®とRotarix®がありますが、当クリニックではRotarix®を取り扱っています。残念ながら、これらの2つの製品の互換性はないので、日本でRotateq®で接種を開始し完了しないままシンガポールに来た場合、当クリニックでは生後6ヶ月未満であれば、Rotarix®を接種し直す方法を勧めることもあります。

2. 日本でもシンガポールでも任意接種

3. 接種時期および接種回数（Rotarix®）

生後6週間より接種可能。1ヶ月以上間隔で合計2回接種。ただし、生後24週目までに2回目を終了する。

4. 接種方法

日本でもシンガポールでも経口接種

5. 効果の持続時間

はっきりとしたデータはありませんが、最低2〜3年間（一番重症化による影響が大きい時期）と言われています。

6. その他

生ワクチンで、接種後1週間くらいは便中に弱毒ワクチンウイルスが排泄されますが、これにより周りの人が胃腸炎を発症する可能性は低いです。また、副反応としては下痢や便の色が緑色になるなどの変化が認められますが、いずれも経過観察するだけで良いレベルです。報告数は少ないですが、接種後（報告上多いのは10日後くらい）に腸重積（腸が腸の中に折り重なるように入り込み、進行すると腸壊死を起こす）を起こす可能性があります。

このワクチンが生後24週目までに完了するよう決められている理由の一つが、「腸重積が起こりにくい月齢のうちにワクチン接種を終わらせるべき」ということです。