腸チフス – 予防接種

1. 予防する疾患・感染症

腸チフスは、サルモネラ属のチフス菌による感染症ですが、日常的に遭遇する「サルモネラ感染症(サルモネラ腸炎)」とは別物です。感染経路はA型肝炎と同様で、患者や保菌者の糞便から排泄されたチフス菌が水や食物を介して経口感染するため、下水道の整備が整っていない衛生状態が悪いところでは感染の危険があります。

経口感染ですが、下痢はあまり認められず、逆に便秘になることも多いです。菌が腸に入った後、血液中に侵入するため、全身性の菌血症と呼ばれる状態になります。典型例では、最初の1週間ほどで次第に熱が上昇し、バラ疹と呼ばれる発疹や脾臓の腫大が認められます。その後、40度前後の高熱が約1〜2週間近く持続するため、英語では「Typhoid fever」と呼ばれます。重症例では意識障害に至ることもあり、熱が下がり始める頃に腸内出血や腸穿孔を起こすことが知られています。

人のみに感染して病気を起こしますが、逆に感染源が人に限られているため、公衆衛生水準の向上とともに発生率を抑えることができ、アジアでは日本やシンガポールでは激減しています。しかし、他の東アジア、東南アジア、南アジア、中東、東欧、中南米、アフリカなどでは蔓延していて、日本やシンガポールにおいては、これらの蔓延国からの人の出入りによる輸入事例が相対的に増加しています。

日本国内での報告では、原因食品としてカキなどの貝類の生食や豆腐、サラダなどがあります。予防には手洗いや食事内容(十分に加熱したもの)を注意することが必須ですが、併せてこれらの地域への出張者・旅行者・転居者には、予防接種をお勧めします。世界的には経口ワクチンも存在しますが、当クリニックで取り扱っているのは、不活化の注射ワクチンになります。

2. 日本でもシンガポールでも任意接種(日本には承認されたワクチンはなし)

3. 接種時期および接種回数

2歳以上で接種可能。1回のみ。持続した免疫が必要な場合は、3年毎に接種。

4. 接種方法

皮下注射または筋肉注射。

5. 効果の持続期間

約2〜3年間

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