日本においては、子宮頸がんは年間約1万人が罹患し、約2900人が死亡しています。患者数、死亡者数ともに近年増加傾向にあり、特に20~40歳代の若い世代での罹患の増加が著しいものとなっています。
子宮頸がんの多くはヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスの感染が原因となります。HPVの主な感染経路は性的接触です。HPVはごくありふれたウイルスで、現在までに200種類近く存在が確認されており、その中でHPV16、18、31、33、35、39、45、51、52、56、58、59、66、68の14タイプがハイリスクHPVといわれています。
性交渉の経験がある女性のうち50~80%は、生涯で一度はHPVの感染機会があると推計されています。したがって、性交渉の経験のある女性は誰にでも子宮頸がんを発症する危険性があると言えるのです。しかしHPVに感染しても多くの人は無症状のまま一過性の感染に終わり、病気を発症することはありません。HPV(特にハイリスクHPV)が持続的に長く感染し続けるごく一部の女性において、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がんという前がん病変を経て、数年程度かかって子宮頸がん(浸潤がん)が発生することがあるのです。
前がん病変のうちに発見して治療を行うことでがんへの進展を防ぐ(二次予防)のが子宮頸がん検診(細胞診)です。ただ、頸がんや前がん病変を有する人が検診で陽性を示す割合(感度)は50~70%と十分に高いとは言えず、がんや前がん病変がある人でも、一定の割合で検診では異常なし(偽陰性)と判定されてしまう危険性があります。これに対し、HPVの感染自体を予防して前がん病変・頸がんを発生させないようにする(一次予防)のがHPVワクチンです。現在使用可能なHPVワクチンは頸がんの約6~7割を予防できると考えられています。
HPVワクチンと子宮頸がん検診の両方による予防が最も効果的です。
次回はHPVワクチンとその効果についてお話しします。
当クリニックにて9価のHPVワクチン接種を開始しています。9歳以上の娘さんをお持ちの親御さんで接種を検討されている方はお気軽にご相談ください。
医師 長谷川 裕美子