ボトックス注射(ボツリヌス毒素注射、以下BTX注射)。美容に興味のある多くの女性は耳にしたことがある美容医療に用いられる一つの方法ですが、その他の疾患でも用いられます。日本では特に神経内科、眼科やペインクリニックなどで扱われてい
ます。眼科領域においては、眼瞼痙攣(まぶたのけいれん)や片側顔面痙攣(顔のけいれん)で保険適応になっています。眼瞼痙攣と診断された患者さんは、様々な訴えがあり、「目が開けにくい(開瞼困難)」、「まばたきが多い(瞬目過多)」というような訴えの他に、最も多いのが「まぶしさ(羞明シュウメイ)」です。その他にも「目が乾く」、「目がヒリヒリする」などドライアイに似た訴えのこともあります。
眼科領域以外では、歯ぎしりの改善のために噛む筋肉である咬筋にBTX注射が使用されています。また、「試験の答案用紙や仕事上の重要な書類がふやける」、「デートに支障をきたす」、「ネイリストの仕事に差し障る」など、手のひらや腋(ワキ)
の多汗症に対しては、ボトックス治療が功を奏しています。
シンガポールおいて、日本人医師による美容医療は規制されていますが、上記のような医学的な症状に対してBTX注射は非常に有効であると考えています。BTX治療は効果が明確にわかる治療ですが一方、部位や注入量を誤ると一過性ですが患
者の苦痛を伴ってしまうこともあります。
高い満足のためにも投与量を少量から開始し、個々によっては効果が不十分なら後日追加することもあるため、治療を開始するにあたり、医師─患者の信頼関係が何よりも大事な治療方法と考えます。
医師 岡野 喜一朗