糖尿病の三大合併症のうち、最も早期に出現してくるのが、糖尿病性神経障害です。早くて糖尿病を発症してから5年程度で生じてきます。従って、糖尿病と診断された時点で既に神経障害を起こしているケースもみられます。神経障害は、網膜症や腎症と同様に高血糖が持続することにより神経が変性したり、神経を栄養する毛細血管の障害で血流が低下することで生じてきます。糖尿病神経障害は、大きく末梢神経障害と自律神経障害に分けられます。
末梢神経障害:痛みや温度を感ずる感覚神経が障害されると、手足の先が左右対称に痺れたり、じんじん痛んだりします。進行すると運動神経も障害され、顔面神経麻痺や物が二重に見えたりする(動眼神経麻痺)ことがあります。また、痛みに対して鈍感になるため、足の火傷や怪我の発見が遅れ足壊疽を起こすことや、心筋梗塞を起こしても痛みを感じない(無痛性心筋梗塞)こともあり大変危険です。
自律神経障害:自律神経は胃腸や心臓、血管の働きをコントロールしています。自律神経が障害されると、胃のもたれ(胃無力症)、便秘や下痢、起立性低血圧による立ちくらみ、排尿困難やインポテンスなど様々な症状が現れます。
糖尿病性神経障害と診断された場合は、症状の進行を防ぐために良好な血糖コントロールの維持が重要です。薬物療法としては、ビタミンの一種であるメコバラミンやアルドース還元酵素阻害薬、手足のしびれ、痛みに対しては抗不整脈薬や抗うつ薬の一種などが使われます。また、普段から足をよく観察し怪我や火傷を防止したり、早期発見することが重要です。
医師 中澤 哲也