前回から<1>タイミング法、<2>人工授精に続いて<3>の体外受精、顕微授精についてお話しております。
2022年4月に不妊治療が保険適応になり、「最後の砦」というイメージがあった体外受精も比較的早期に検討し得る治療になりました。保険適応の年齢制限もあるため、早めに体外受精に踏み切るカップルも増えています。
また以前に比べたらここ10年の間に体外受精の話も友人間でオープンにできるような風潮になってきましたし、体外受精は奇形児や染色体異常児の確立が上がるのではと誤解をしている方も少なくなってきました。
実際の年齢が上がれば上がるほど体外受精での妊娠率(着床率)は低下し、流産率は上がります。そして「卵子の質」は一般的に年齢相当と考えられていますが、必ずしもそうではない場合があります。また生理が順調であっても必ずしも「卵子の質」がよいと言うわけではありません。実際、35歳を過ぎると急激に質が低下する方がいます。特に過去に卵巣の手術をされた方、子宮内膜症をお持ちの方、生理が極端に不順の方、喫煙する方、などは卵子の質が実年齢以上に良くない場合が多くあります。
したがって35歳までに1年以上妊娠に至らない場合は卵子検査もかねて、体外受精をすることをお勧めします。卵子が良好であれば1回の体外受精で妊娠することも多く、また受精卵が余れば(余剰胚といいます)凍結保存し、次の妊娠(第2子)のためにストックしておくことも可能です。例えば35歳のときに採卵して凍結しておいた受精卵を第2子妊娠のために38歳で移植することができます。その場合、38歳で採卵、移植した受精卵に比べて妊娠率が高くなります。つまり卵子が若い受精卵ほど妊娠しやすいのです。時期の見極めを間違えないように担当医としっかり相談して治療をしましょう。
次回も引き続き体外受精についてお話します。
医師 長谷川 裕美子