本疾患はわが国(日本)で最も多い性感染症(STD)です。若年層の女性に多く、成人では性行為により感染しますが、新生児は母親から産道感染することもあります。
クラミジア感染は男女とも性的活動の活発な若年層に多いです。特に女性でその傾向が目立っており、29歳以下では男性患者数を上回っているとの報告があります。
最近では初交年齢の低下に伴って、10代の女性の感染率の高さが将来の不妊につながるとして憂慮されています。
女性では、感染を受けても自覚症状に乏しいため診断治療に至らないことが多く、無自覚のうちに男性パートナーや出産児へ感染させることもあるので、注意が必要です。また、口腔性交による咽頭への感染も少なくありません。
男性でクラミジアに感染すると尿道炎を起こすことが最も多く、若年層の精巣上体炎の原因ともされています。排尿痛、尿道不快感、そう痒感などの自覚症状がでます。
淋菌性尿道炎に比べて潜伏期間は長く、2~3週間とされています。
女性では子宮頸管炎、骨盤内付属器炎(PID)、肝周囲炎(Fitz-Hugh-Curtis症候群)、不妊などを起こしますが、自覚症状の乏しい場合が多いです。そのため、潜伏期間を特定するのは困難です。もし原因不明の腹痛や帯下の異常(水っぽい、量が多いなど)を認めた場合はクラミジア感染症かもしれません。また、妊婦の感染は新生児のクラミジア産道感染の原因となり、新生児肺炎や結膜炎を起こす可能性があります。
クラミジアの検査は腟頸管部より分泌物を採取して行います。治療には抗菌薬、とくにテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬を使用します。
クラミジアは男女間でお互いに感染させるいわゆるピンポン感染があるため、両者の治療を同時に行うことが重要です。
予防にはコンドームの使用、感染が疑われる相手との性的交渉を避けるなどがあります。不特定多数の相手との性交渉は避け、心配な場合はSTD検査やブライダルチェックなどで検査を受けることをお勧めします。
医師 長谷川 裕美子