前回までに子宮頸がんの疫学、原因、予防、HPVワクチンと効果についてお話ししました。今回は一時期日本で問題となった副作用についてお話しします。
WHOは世界中の最新データを継続的に解析し、HPVワクチンは極めて安全であるとの結論を発表しています。一方、HPVワクチンは筋肉注射であるため、注射部位の一時的な痛み・腫れなどの局所症状は約8割の方に生じます。また、若年女性で注射時の痛みや不安のために失神(迷走神経反射)を起こした事例が頻度は少ないですが報告されているため、接種直後は30分程度安静にすることも重要です。
2017年11月の厚生労働省専門部会において、慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されておらず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が発表されています。また2016年12月に厚生労働省研究班(祖父江班)の全国疫学調査の結果が報告されました。これによると、HPVワクチン接種歴のない女子でも、HPVワクチン接種歴のある女子に報告されている症状と同様の「多様な症状」を呈する人が一定数(12~18歳女子では10万人あたり20.4人)存在しました。
WHOは2016年12月の声明の中で、若い女性が本来予防し得るHPV関連がんのリスクにさらされている日本の状況を危惧し、安全で効果的なワクチンが使用されないことに繋がる現状の日本の政策は、真に有害な結果となり得ると警告しています。日本産科婦人科学会は、先進国の中で我が国に於いてのみ将来多くの女性が子宮頸がんで子宮を失ったり命を落としたりするという不利益が生じないためには、科学的見地に立ってHPVワクチン接種は必要と考え、HPVワクチン接種の積極的勧奨の再開を国に対して強く求める声明を4回にわたり発表してきました。それでも一時期は70%ほどあった接種率はまだ数%にとどまっています。将来もし自分の娘が『子宮頸がんになった』と報告してきた場合、あの時ワクチンを打っていれば予防してあげられたはずなのに、と我々親は後悔することになるかもしれません。子宮頸がんの予防およびこの病気の撲滅を目指していくべきと考えています。
当クリニックにて9価のHPVワクチン接種を開始しています。9歳以上の娘さんをお持ちの親御さんで接種を検討されている方はお気軽にご相談ください。
医師 長谷川 裕美子