骨粗鬆症とは、骨密度が低下して骨がスカスカになり骨折を起こしやすくなる病気です。骨粗鬆症の主な原因としては、加齢、運動不足、カルシウム不足、喫煙や閉経後のホルモンバランスの変化などが挙げられます。
この骨粗鬆症を予防するための薬を一定期間以上服用している間に、抜歯やインプラントなどの外科処置を行った場合、炎症がひどくなったり、顎骨壊死を起こすといった副作用を起こすことがあります。顎骨壊死とは、顎の骨が細菌感染して腐ってしまう病気で、口の中で骨が露出したり強い痛みが出るなどの症状が現れます。また、通常の歯科治療を行った場合でも歯ぐきの腫れや顎の痛みが発生することがあります。
このような副作用は全ての骨粗鬆症の薬が関係しているわけではなく、特にビスフォスフォネート系薬剤が関係しています。骨粗鬆症の薬は、骨の代謝を抑えることで骨からカルシウムが出ていくことを防ぎ、骨が減らないようにします。しかし同時に新しい骨や歯ぐきなどの軟組織を作る機能も抑制するので、そこから細菌感染することにより傷が治りにくくなったり、骨が腐るなどの副作用が起こってしまうのです。
今までは歯科治療前は少なくとも3カ月間休薬することが勧められていましたが、2023年からは原則として服薬を中止しないことが提案されました。しかし、引き続き歯科治療には注意が必要です。治療前の抗生剤の服用や、治療後の経過観察をきちんと行う必要があります。
歯科治療は骨粗鬆症の治療を始める前に済ませておきましょう。そして、骨粗鬆症の治療開始後は定期的に歯科検診を受けて、日頃からお口の中の健康を保つことが重要です。すでに骨粗鬆症の薬を飲んでいる人は、歯科治療を開始する前に歯科医師にその旨を必ず伝えるようにしてください。
歯科医師 畑 昌子