よく噛んでおいしく様々なものを食べるには、少なくとも20本以上の歯が必要だと言われています。また、20本以上歯が残っている人は寝たきりや病気になる率も少ないと言われています。そこで、「高齢になっても20本以上の歯を保ちましょう」と1989年から厚生省(当時)と日本歯科医師会が推進しているのが「8020運動」です。この運動が始まって約30年経った2016年、2人に1人が8020となり、当初は10%にも満たなかった8020達成者が50%になりました。
8020運動が始まった1989年の日本人平均寿命は男性が75.9歳、女性が81.8歳でした。2023年の日本人の平均寿命は男性が81.0歳、女性が87.0歳と予測されています。平均寿命が延びた今、8520、9020を推進し、残存歯が20本以上の高齢者を表彰する自治体も増えてきました。
しかし、仮に20本の歯が残っていたとしても、その歯がグラグラして噛むと痛いようでは生活の質の向上は望めません。どのような状態の歯でも20本残っていれば良いのではなく、健康が保たれた歯が20本残っていることが重要です。
歯を失う原因はさまざまですが、圧倒的に多いのがむし歯と歯周病で、40歳以上になると歯周病の罹患率が増えます。80歳、85歳、90歳で20本の歯を残すのは難しいと思われるかもしれませんが、日ごろから正しい歯のケアをすることによって歯の喪失を防ぐことができます。
歯の健康を保つためには、若い頃からの歯の健康への心がけ、子どもの頃からの正しい歯のケア、毎日のケアが大切です。痛くなったときだけ、気になったときだけ歯科医院に行くのではなく、普段から継続的なケアを続けることが、8020、8520、9020達成への近道でしょう。
歯科医師 畑 昌子