日々歯科診療をしていると、歯ぐきにぽつんと出来た小さなふくらみを見つけることがあります。ふくらみを指で触れると白い膿が流れ出てくる場合もあります。おできのようなふくらみは、通常は歯根部のトラブルか、歯周病によるトラブルかのどちらかが原因であることが多いです。
このふくらみは医学的には瘻孔(ろうこう)と呼ばれ、歯根の周囲に溜まった膿を排出する孔のことをいいます。
体の免疫力が低下すると、通常時には抑え込まれている細菌の活動が活発になり、歯ぐきの内側やあごの骨の中で膿が増殖することがあります。狭い空間内で膿が増えることで内圧が高まり、膿は外への出口を求めはじめますが、圧力を逃がす場所がなければ、痛みや腫れが引かないこともあります。
最終的には多くの症例で歯ぐきに出口が自然に作られることにより、内部の圧力が低下し炎症が落ち着いてきます。体の抵抗力や薬の作用が細菌の活動よりも勝ってくれば、膿を外部に排出させようとします。
瘻孔そのものは痛むことは少なく、多くのケースでは2、3ミリ程度の柔らかいふくらみで、外側に向かって盛り上がってきます。さらに炎症が快方に向かえば、瘻孔は小さくなったり、消えてしまったりするケースもあります。
ただし、原因を取り除かなければ、腫れが強く出たりおさまったりを繰り返すことが多く、根本的には治癒しません。
治療方法は原因によって異なり、根の先端の病巣が原因ならば根管治療、歯周病であれば洗浄、歯石除去などの治療が必要になります。トラブルの原因を突き止めて適切に治療することで状況は改善していきます。
歯科医師 畑 茂