食事をしたり歯を擦り合わせたりすることで歯の先端部分は知らぬ間にすり減っていきます。これを咬耗(こうもう)と呼びます。咬耗の程度には個人差があります。例えば、上と下の歯の切端部(歯の頭の部分)が噛み合わさっている人に顕著な咬耗がみられたり、高齢でむし歯がなく硬いものを好んで食べる方たちは臼歯部の歯のすり
減りが激しかったりといった具合です。
歯がすり減る他の原因に歯ぎしりがあります。歯軋りそのものを根本的に止めることは難しいので、歯科でマウスピースを作製してそのすり減りのスピードを遅らせる対策をとることがあります。
歯のすり減ること自体は自然なことです。長い年月をかけて歯が削れていく場合、歯の表層にあるエナメル質がなくなって歯の本体の象牙質が露出してくることが多いです。エナメル質と象牙質は硬さが異なるので、柔らかい象牙質部分がくぼんでくることが多く、さらに時間が経つと歯が大きく欠けてしまうことにもつながります。歯が不自然な形にすり減ったり欠けてしまった場合は、歯の崩壊を防ぐためにコンポジットレジンという材料で穴を埋めて補強することもあります。
一般的には咬耗は加齢とともに進むものなので、どこからが歯の病気として考えるべきかの判断は難しいものがあります。歯に違和感を感じたら気軽に相談して、治療に踏み切るか経過観察するかを判断してもらえる環境を作っておくと安心です。
歯科医師 畑 茂