歯科治療をしていると、患者さんが不摂生をしていなくても、高齢でなくても残念ながら歯を抜かなければいけない場面に遭遇します。歯が抜けた部位をインプラントで治療ができればよいのですが、顎の骨の状態や費用などの制約から難しい場合もあり、入れ歯をお勧めすることがあります。
歯を数本失ったくらいでは義歯など入れなくても難なく食べられるし、むしろ入れた方が食べにくいし噛むと痛かったから、義歯を一度は作ってみたものの使わなくなってしまったという方もいらっしゃいます。しかし長い目で見ると、残った歯を酷使することでトラブルが増え、左右でバランスよく噛めないことで肩こりなどの不調につながるので、歯がない場所はやはり何らかの人工物で補ってあげることが望ましいです。
義歯は慣れて馴染んでくるまで時間がかかります。天然の歯と同じ感覚ではありませんが、多くの方が少しずつ自然に使えるようになっていきますので、義歯はダメだとすぐに見切りをつけず使ってみてください。また、噛むときに痛みやズレを感じたら(入れ歯に限りませんが)遠慮なく歯科医に伝えて調整してもらってください。数回の調整で痛みなく噛めるようになってきます。義歯を仕方なく入れるというより、ぜひ前向きにとらえて良質な食事の時間にできるパートナーになってもらえるとよいですね。
医師 畑 茂