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百日咳

最近、日本で「百日咳(ひゃくにちぜき)」という細菌による感染症が増えていて、悲しいことに2025年には赤ちゃんがおふたり亡くなられました。
百日咳は、激しい咳が長く続くのが特徴で、特にまだ体の小さな赤ちゃんにとってはとても危険な病気なんです。命に関わることもあるので、油断できません。さらに心配なことに、今の日本では、お薬(抗生物質)が効きにくい「耐性百日咳」という菌が問題になっています。生後2ヶ月になるまで予防接種を受けられない赤ちゃんを、私たちはどうやって守ったらいいのでしょうか?

そこで、ぜひ知っておいていただきたいのが、妊娠中のお母さんへのワクチン接種です。シンガポールでは2017年から、妊娠16週から32週の間に「Tdapワクチン(Boostrix)」というワクチンを接種することが推奨されています。これは、お母さんの体の中で作られた免疫が赤ちゃんに移行することで、生まれたばかりの赤ちゃんを百日咳から守るためなんです。
実は、イギリス(2012年)、アメリカ(2012年)、オーストラリア(2013年)でも、同じように妊娠中のワクチン接種が推奨されています。日本でも、この「Tdapワクチン(Boostrix)」が一刻も早く使えるようになることが望まれています。

また、「コクーニング」といって、赤ちゃんがまだワクチンを受けられない時期に、周りがワクチンを受けることで、間接的に赤ちゃんを守るという方法も大切です。シンガポールでは、11歳のお子さんにTdapワクチン(Boostrix)を定期接種しています。

日本では、「DT」という百日咳の成分が入っていない二種混合ワクチンが定期接種されていますが、できればこれをTdapワクチンに変更していただきたいです。特に赤ちゃんを守るためには、アメリカのように小学校に入る前にもTdapワクチンを受けるのが理想的です。

さらに、日本では三種混合ワクチンが出荷調整になっているという問題もあります。ワクチンで防げる病気をワクチンで防げないというのは、私たちみんなの安全に関わる大きな問題です。

大切な赤ちゃんを守るために、私たち一人ひとりが百日咳について知り、できることから対策を始めていきましょう。

医師 林 啓一