人の視力は常に変化し続けます。その中でも人生で大きな変革期を迎える時期があります。それが、「10代」と「40歳から55歳あたり」です。
「10代」は、まさに成長期による変化があります。ヒトの眼球の直径は生まれた時には16mm程度で「遠視」の状態にあります。成長すると平均24mm程度まで大きくなっていき、「正視」の状態になり、これが過伸長してゆくと「近視」になります。
近年はパソコンやスマホで仕事や勉強をする時代になり、世界的に近視人口が増加しています。幼児期は「弱視」を早期発見する意味で、4歳から5歳で視力検査をやっておいたほうがいいでしょう。普通に生活していても視力が育っていないことがあります。学童期の視力は、やはり1年に1回はチェックし、最近では近視を早期に発見できれば、その進行を緩める点眼薬やコンタクトレンズが開発され、将来の強度近視を予防できる時代になりました。そのような中でもやはり眼鏡は大事な存在になります。学童期は、成人と違いピントを合わせる調節力が強いため、人生で初めての眼鏡を作成する場合は、この調節力を考慮した眼鏡作成がキーとなります。眼鏡店で作成するとしばしば弱すぎる、または、強すぎる眼鏡が作られがちです。眼科にて、調節力を低下させた状態で「真の屈折力」を計測してから、眼鏡作成をすることを強くお勧めします。その後は成長期を考え、1年に1回くらいはレンズを買い換えると良いと思います。
一方、40歳から55歳あたりは、調節力の低下に伴う「老眼」が急速にすすむ年代です。20代から30代で購入した眼鏡は、間違いなく合わなくなってきています。遠くが良く見えたとしても、それによって近くがみえずらい、疲れる状態を引き起こすことがあります。これにより、眼痛、頭痛、肩こりや、ひどい場合は吐き気まで引き起こすことがあります。海外で診療していると、コンタクトレンズをまとめて1、2年分、日本でまとめ買いしてきたという30代後半から40代の方を多くみかけますが、多くの方が老眼や眼精疲労に悩まれています。この原因も調節力にあわせたコンタクト作成をしなかったことによります。このようなことに備え、コンタクトレンズは半年後ごとに検眼しながら購入することをお勧めします。また、眼鏡作成も、エイジングに伴う水晶体の変化で屈折力が変わり、乱視、近視または遠視化をきたします。このような医学的な観点からみても、眼鏡は3年に1回は検眼のうえ、再作成することをお勧めします。
医師 岡野 喜一朗