胃がんは日本で年間48000人近くが亡くなる疾患であり、がんの中で胃がんによる死亡数は男性2位、女性で3位となっています。(2014年)このように命にかかわる病気ですが、ではどのように対応していくのがよいのでしょうか。それはとにかく早期に発見することです。
胃がんの基本治療は手術です。早い段階で発見された胃がんは手術でがんをとりきれる可能性があります。この場合は、胃を2/3程度切除するか、もしくは胃をすべて切除することとなります。どうして胃をこんなに切除しなければいけないのかと疑問に思われることでしょうが、それはがんが周囲のリンパ節に転移する可能性があるため、手術の際には周囲のリンパ節も一緒にとってくるからです。このため、胃の手術をうけた後は胃が小さくなる、もしくはなくなることにより食べられる量が減ったり、胸焼けが出現したりといった障害が発生することがあります。
では、ある程度進行した胃がんが発見された場合はどうでしょうか。手術でとりきれると判断した場合は手術を行います。ただ、胃がんの進行度によっては手術で取りきれたと判断したときでも、手術後に再発予防のための抗がん剤を投与することがあります。しかし、肝臓や肺などのほかの臓器に転移していた場合や、腹膜というおなかの中の膜にがんが広がっていた場合など、手術でとりきれないと判断した場合の治療は手術ではなく抗がん剤が主体となります。残念ながら、この場合はがんを治すことは非常に困難です。
ちなみに、ごく早期に発見された場合には、条件は厳しいのですが内視鏡(胃カメラ)で治療できる可能性があります。この場合は術後の障害はほとんどありません。
繰り返しになりますが、とにかく重要なのは早期に発見することです。ただ恐ろしいのは、早い段階の胃がんはほとんど症状を出さないこともあるということです。症状がなくとも、特に35歳以上の方は定期的に胃のバリウム検査もしくは胃カメラによる検査を受けることをお勧めします。
なお、最近の研究でピロリ菌という細菌が胃がんの発生に関係している可能性が示されています。胃粘膜にピロリ菌が感染していた場合、ピロリ菌を退治(除菌)することで胃がんのリスクを下げられますので、積極的に除菌を受けてください。(ピロリ菌については、メールマガジン718(28/03/2017)もご参照ください。)
医師 堀部 大輔