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前十字靭帯損傷

よく聞かれる病名ですが、当地シンガポールではサッカーをする方が多いためか、外来では「サッカーで受傷した」といって来られる方が多い印象です。コンタクトスポーツにおいて相手にタックルをされて膝をひねったり、バレーボールでのジャンプの着地やバスケットボールでの急な方向転換、スキーのときの転倒など、膝に大きな外力と過度の負担がかかった時に起こします。受傷時に痛みを感じ、その後だんだんと膝が腫れてきます。

通常、膝は4本の靭帯で構成されており、内側・外側の側副靭帯と関節内部にある前・後十字靭帯で膝の動きをコントロールしています。しかし、何らかの大きな力が加わり靭帯がその力に耐え切れなくなると切れてしまいます。するとそこから出血し、関節包という袋の中に血が貯まることで膝が腫れてきます。外来では、膝にたまった血が吸引できればこの靭帯の損傷の可能性を診断の一つとして疑いますが、診察と併せMRI検査を行って最終的に診断しています。

いったん切れてしまった靭帯はもう自然には治りませんが、損傷しても1ヶ月ほどで痛みが取れて日常生活に支障なくなることが多いです。スポーツを日常的に行わない人ではそのままの状態にしておいても支障がないこともありますが、スポーツをしたい方には手術を勧めています。一般的には近くの腱で必要のない部位を採取して靭帯を再建します。手術後にはリハビリテーションを行い、完全なスポーツ復帰まで通常は半年程度かかります。

膝の怪我に関しては、痛みがなくなったからといって放置せず、原因を調べてきちんと治療方針を立てることが大切です。

医師 長谷川 典子