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マグネシウムのお話

外来診察ではよくカルシウムについて訊かれることが多いのですが、皆さんあまり気にしていないのがマグネシウムです。確かに、マグネシウムというと「金属」「高校のとき元素記号を習った」「工場で使われている合金」というイメージしか湧いてこないかもしれません。マグネシウムが私たちの体にとって必要不可欠なミネラルだということは、あまり知られていません。

様々な症状の改善に対するマグネシウムの研究が進められていますが、整形外科の観点からお話をすると、マグネシウムは筋肉を動かすために必要なミネラルの1つであると言えます。筋肉が収縮するためにはカルシウムが必要である一方、筋肉を緩めるためにはマグネシウムが働きます。つまり、普段私たちが何気なく行っている「歩く」「座る」「走る」といった動作の一つ一つにもマグネシウムが関わっているということになります。そのため、マグネシウムが不足するとうまく筋肉を緩めることが出来なくなります。すると筋肉は縮んだままとなってしまい、これがいわゆる「こむら返り」の原因になります。

1日に必要なマグネシウムの量は成人男性で350─370mg、成人女性で270─290mgと言われていますが、国民健康・栄養調査によると、男性が1日約100mg、女性が約80mgも1日で不足しているそうです。そして、五大栄養素とされるビタミン、ミネラル、脂質、タンパク質、炭水化物のうち、マグネシウムを含むミネラルだけは私たちの体内で作り出すことが出来ません。すなわち、体の外側からしっかり補給してあげる必要があります。食べ物から摂る場合には、わかめやあおさ・昆布などの海藻類がお勧めです。お料理に海塩(天日塩・平釜塩)を使うのも良いでしょう。米ぬかや玄米もマグネシウムが豊富です。

このように、マグネシウムを多く含む食材は、和食でよく使われています。食生活の欧米化で、和食を食べる機会が減ったことがマグネシウム不足の原因になっているのかもしれません。日ごろの食事でマグネシウムを意識することがとても大切ですが、忙しい方はサプリメントで補給することも出来ます。その場合は、容量をきちんと守って摂取するようにしましょう。(高濃度のマグネシウムは胃腸では吸収されにくく、また下痢や吐き気などを引き起こすことがあります。)

医師 長谷川 典子