先日シンガポール政府よりCOVID-19ワクチンの妊婦への接種に対し、ガイドラインを更新すると発表されました。
以下に日本産婦人科学会、産婦人科感染症学会が今年5月に出した最新の声明を簡単にまとめています。
1 COVID-19ワクチンは、現時点で妊婦に対して短期的安全性を示す情報が出つつあるが、中・長期的な副反応や胎児および出生児への安全性に関しては今後の情報収集が必要である。現時点では世界的に接種のメリットがリスクを上回ると考えられる。
2 流行拡大の現状を踏まえて、妊婦をワクチン接種対象から除外しない。特に人口当たりの感染者が多い地域では積極的な接種を考慮する。接種する場合には、産婦人科医は被接種者に、長期的な副反応は不明で、胎児および出生児への安全性は確立していないことを事前に十分に説明する。同意を得た上で接種し、その後30分は院内で経過観察する。現時点でmRNAワクチンには催奇性や胎児胎盤障害を起こすという報告は無いが、器官形成期(妊娠12週まで)は、偶発的な胎児異常の発生との識別に関する混乱を招く恐れがあるため、ワクチン接種を避ける。妊婦には母児管理のできる産婦人科施設などでワクチンを接種する事が望ましく、なるべく接種前後に超音波やドップラー検査などで胎児心拍を確認する。直前検査が難しい集団接種や、産科のない診療所などで接種する場合、接種前後1週間以内に妊婦健診を受診するように促す。また,接種後に腹痛や出血、胎動減少などの症状があればすぐに産科を受診するように指示する。
3 妊婦さんならびに妊娠を希望する方で、感染リスクが高い医療従事者、保健介護従事者、重症化リスクが高い肥満や糖尿病など基礎疾患を合併している場合は、ワクチン接種を積極的に考慮する。
4 妊婦のパートナーは、家庭内での感染を防ぐために、ワクチン接種を考慮する。
5 妊娠を希望される女性は、可能であれば妊娠する前に接種を受けるようにする。(生ワクチンではないので、接種後長期の避妊は必要ない。)
上記のポイントとしては、長期的な予後は不明、しかし現在のところ催奇性や胎児胎盤障害を起こすという報告はない。ただし、妊娠12週までは避けるべき。重症化リスクが特に高い基礎疾患を合併している妊婦では接種よりも感染のリスクの方が高い。パートナー、家族は積極的接種推奨。また妊娠希望の場合、妊娠前の接種が望ましい(接種後の避妊の必要はない)。妊婦で接種する場合は接種前後の胎児の状況確認のために超音波検査をすることが望ましい、という点だと思います。ワクチン接種前後の胎児心拍の確認希望の方は遠慮なく受診してください。
医師 長谷川 裕美子