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大腸がん検診としての大腸内視鏡検査

2019年の日本でのがんの統計をみると、大腸がんの罹患者数は男性で第2位、女性で第2位で、男女を併せた総数では第1位となっています。
大腸がんの検診としては、日本では1992年から40歳以上を対象とした便潜血検査が導入されており、一定の効果を上げています。もちろん検査としての精度は大腸内視鏡検査の方が高いので、理想を言えば大腸内視鏡検査で検診を行うことが望ましいのですが、1)安全性と質の担保、2)検査処理能力(キャパシティの問題)、3)医療経済的側面などの問題から一般的な検診として行うのはまだ難しい状況です。

では、どのような方から優先して大腸内視鏡検査による検診を導入するべきでしょうか。日本でも現在大規模な検討がなされていますが、2023年12月のJAMA Network Open誌電子版にこれに関連した論文が掲載されました。
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2812587
この論文では、筆者らは2008年から2018年の間にオーストラリアで大腸がんの内視鏡検診を受けた29万6170人(うち50歳未満は1万1103人)のデータを分析しています。その結果、腺腫(大腸腫瘍の1種で、大腸がんは腺腫ががん化したものが多い)の有病率は、男性では40―44歳が14.2%、45―49歳は17.1%、50―54歳は20.2%で、女性では40―44歳が8.1%、45―49歳は10.2%、50―54歳は12.4%でした。また、2008年と2018年を比較すると、腺腫の有病率はどの年代でも増加する傾向を示しました。さらに、より癌に近い腺腫である進行腺腫の有病率は、50歳未満の男性で4.6%、50歳以上の男性で8.6%、50歳未満の女性で3.1%、50歳以上の女性で5.3%でした。2008年と2018年の比較では、50歳未満の男女では増加し、50歳以上の男女では減少していました。
筆者らはまた、オーストラリア統計局のデータを用いて1988年から2018年のオーストラリアの大腸がんの発症率の推移も調査しており、50歳以上では男女ともに減少、50歳未満では男性は増加、女性は減少していたという結果でした。これらの結果から筆者らは、大腸がんの内視鏡検診の開始年齢を、男性は40歳から、女性では50歳以上または55歳前後にしてはどうかと提案しています。

この提案では女性はやや遅めですが、男性の40歳というのは日本でも大腸がん検診が推奨されている年齢であり、やはり一つの目安になりそうです。費用の面などややハードルが高いところもありますが、40歳を越えたら、大腸がん検診としての大腸内視鏡検査をぜひご検討ください。

医師 堀部 大輔