唾液ってすごい!
2023年8月15日
シンガポールでよくある「眼の症状ランキング5」
2023年8月29日

熱性けいれん4

発熱に伴い1才から4、5才にかけての子どもがけいれんを起こす熱性けいれんのお話を続けます。2023年1月に「熱性けいれん(熱性発作)診療ガイドライン2023」が発行され、現在日本ではこのガイドラインを目安にして、家庭環境とか離島などで医療機関へのアクセスが悪いといった個々の事情を考慮して方針が決められています。前回は、てんかん発症のリスクや繰り返し起こす可能性が高い要因についてガイドラインを元に少し詳しくお話をしました。

今回は熱性けいれんを何度も繰り返す場合に予防について説明をします。約8割の患者さんは生涯で多くとも2回までの発作しか起こしませんので、予防を考えるというケースはかなり限られてきます。ガイドラインで予防を検討すべきとされる状況は
1)長いけいれん(15分以上)を起こしたとき
2)以下の再発リスクを2つ以上満たした熱性けいれんを2回以上くりかえしたとき
・一部分のみの発作
・1日以内に2回以上起こした
・1歳未満の初回発作
・発熱後1時間以内の発作
・38度未満での発作
・発達の遅れ
・けいれんの家族歴
とされています。つまり、長い発作を起こした時は1回でも予防を検討した方がいいが、それ以外の場合は、前回お話ししたリスクが複数ある発作を複数回起こした時に検討するということです。もちろん、それぞれ短くリスクは全くない発作であっても発熱ごとに起こすような頻回発作も予防を考えることになります。

予防の方法としては、発熱に気づいたらジアゼパムというけいれんを抑える薬をお尻から入れ、8時間後にも熱が続いていたら同量を追加することが推奨されています。
ジアゼパムは、日本ではダイアップという座薬形態で、シンガポールではStesolidという注腸液(浣腸のような容器に入っている液体)として使われていますがどちらも成分は同じです。予防を開始後、1―2年、もしくは4―5才を目安に予防を中止して良いとされていますが、この期間につては明確なエビデンスはまだありません。ジアゼパムを使う発熱の目安については、37.5度から38度とされていますが、ふだんの体温や熱の出し方が人によって異なるので、患者さんの事情によって相談するのがよいでしょう。

また、ジアゼパムはふらつきや眠気といった作用もあるので、活発な子だと転んでけがをするリスクもありますし、意識障害と眠気の区別がつきづらいため急性脳症の発見が遅れる可能性もはらんでいますので、上記の予防目安を満たしたからと言って機械的に予防開始するのではなく、これらのデメリットと予防というメリットを十分吟味して個別に予防計画を立てる必要があります。ご心配な場合は、小児科でご相談ください。
なお、第2回でも触れたように、シンガポールではジアゼパムの眠気が強くなって急性脳症との区別がつきづらくなる点を重視して、予防は解熱剤を連続して与える方法が主流となっており、シンガポールで使われるジアゼパム注腸(Stesolid)は予防というよりもけいれんが起きた時に自宅で使える抗けいれん薬という位置づけになっています。液体で肛門から入れると注射で入れるのとあまり変わらないくらいに早く薬が効果を発揮するので合理的ともいえますが、頻回の起こす患者さんの場合には予防的に発熱に気づいたら入れるという日本方式の方がいいと個人的に考えています。

次回は、熱性けいれんとワクチン接種について、黒歴史も含めてご紹介します。バックナンバーをご覧になりたい方は、当クリニックHPトップページ右上バナーの「医師コラム」から簡単にご覧いただけます。

医師 長澤 哲郎