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インターネットの使い方1

今回からネットの使い方について触れてみます。よく言われるようにインターネットの情報は玉石混交で、うまく使うと効率よく情報が得られる反面、使い方を誤ると間違った方向にどんどん進んでいく可能性もあります。誤った情報にとらわれず、正しくネットを使いこなすための基礎知識とコツを数回に分けてお話ししていきます。

まず気を付けるべきことは、ネットの情報は誰もチェックしていないことがあげられます。これまでのメディアは、新聞・雑誌にしてもテレビ・ラジオ局でも、必ず「裏を取る」作業と「校閲」を受けなければ媒体に乗せることはできませんでした。
ところが、ネットは誰でも好きなことを書いてアップしたとたん、世界中で閲覧が可能になります。誤字脱字だけでなく、町で誰かかが話したのを聞いたレベルでもたちどころに広まっていきます。わかりやすい例でいうと、離乳食に「添加物入りの人工的な」白砂糖を使うより、「ヘルシーな」はちみつや「ナチュラルな」黒糖を使った方がよいと考えた人が、「はちみつと黒砂糖をふんだんに使った離乳食レシピ」をネットにアップしたとすると、できるだけ自然な素材をつかった離乳食レシピを探している親御さんがたちどころにヒットさせてしまいます。これが既存の媒体であれば、編集者なりディレクターなりのチェックが入り、はちみつも黒砂糖も乳児ボツリヌス症のリスクが高く1歳未満の乳児には与えてはならない食品であるので、そのようなレシピは一般の目には触れないことになります。しかし、ネットでは誰もチェックする人がいないので本人が削除しない限りそのままネット上に存在して、ヒットされるのをひそかに待っていることになります。昨年はちみつを離乳食に原因で生後6か月の乳児が死亡しましたが、ネット上の離乳食レシピを参考にしてはちみつを使っていた親御さんは少なからずいたと思います。

離乳食とはちみつの例は誰が見ても明らかな間違いなのでわかりやすいですが、「〇〇があれば自閉症の可能性が80%」とか、「〇歳までに×ができないと発達の遅れれがある」といった内容だともっともらしく見え、また明確に否定する材料を見つけることも難しいので、そういった数字に惑わされてしまう方がたくさんいらっしゃいます。いったん気になると、ネットにはあらゆる情報があふれているため、自分が気になるストーリー(たとえば、特定のしぐさが〇〇病の初期症状など)を裏付ける情報のみを取捨選択してしまうことになります。先ほど述べたように、ネット上の情報の多くは専門家でない方が書き込みをしている状態ですので、そのようにして得られた内容には(善意か意図的かは別として)多くの誤りがあり、かえって混乱のもとになっていることをしばしば経験します。

正しい情報にたどり着くコツは、そのページの所属先、つまり発信元をチェックすることです。学会や病院、研究所、国や地方公共団体といった公的な組織のホームページにある内容は、専門家が執筆しているだけでなく、複数のチェックを受けていることがほとんどですので、現時点で広く受け入れられているものになります。たとえば、てんかんについて知りたければ、日本てんかん学会や日本小児神経学会といった学術団体、てんかんを得意とする病院、さらにはてんかん協会という患者団体のホームページをみれば診断や治療はもちろん、医療費の補助といった社会的なことまで幅広く正しい知識を得ることができます。逆に、いくら医学博士とか医師と名乗る人物が執筆していても、どこの団体が運営しているホームページかわからなかったり、ブログ会社のアドレスを使っていたりするものは、内容が怪しいだけでなく商業的な意図を持っていることもあるので、間違った知識が入って混乱のもとになります。

珍しい病気の場合は、患者さんやご家族が書いたブログの内容が参考になることもありますが、その病気の全体像を把握しておらず例外的なことが一般論として書かれていたりするので、あくまで参考にする程度が良いと思います。

まとめサイトの類は素人がコピペで作っている可能性もあり、話半分にしておいた方がいいです。

気を付けなくてはいけないのは、ネット上の誤った情報が拡散していくと、多数決の原理でその間違った情報が正しいように見えてしまうという点です。数ではなく、あくまでどこが発信している情報であるかが大切です。

医療情報で迷うときは、担当医にお気軽にご相談ください。

医師 長澤 哲郎