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2026年2月3日
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2026年2月17日

発達障害診療3「自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder,ASD)」

「発達障害診療について2」では、発達障害/神経発達症の定義について述べました。今回、その3では、神経発達症の一つ、自閉スペクトラム症(以下、ASD)について述べていきたいと思います。

ASDはDSM―5で登場した病名で、「コミュニケーションの障害」と「行動・興味・活動の限局や反復」の2つの症状によって定義されています。「自閉」という言葉や症状自体は1940年台から報告が見られ、徐々に疾患としての特徴や定義が整えられてきました。DSM―4では、広汎性発達障害(PDD)のサブカテゴリーとして自閉性障害、アスペルガー障害、小児期崩壊性障害などが存在していましたが、それらがDSM―5ではASDという一つの疾患名にまとめられました。「スペクトラム」という言葉は「連続体、範囲」という意味を持ちます。ASDの患者さんの特徴や症状は患者さんごとに多種多様なので、症状ごとに細かく分類するよりも「連続体」として疾患を捉えるほうがよさそうだ、という考え方です。コラム「その2」で「発達障害という言葉は現在は診断名として使用されていない」と述べましたが、「広汎性発達障害、アスペルガー障害」などの言葉も、同じく現在は診断名として使用されていません。ただしこれらの病名も、「発達障害」という言葉と同じく、日本の発達障害者支援法では今も使用されています。このことからも、疾患の分類や病名は今後も変化しうる可能性があるということが分かります。

とはいえ、病名が変わっても、症状が変わるわけではありません。かつて「アスペルガー障害」と診断されていた患者さんが「ASD」と診断し直されても、その患者さんの症状に変化が起こるわけではありません。それでは、ASDの主要症状の1つ目である「コミュニケーションの障害」とはどんなものがあるでしょうか。簡単に述べると、会話の困難さ(会話を続けられない、相手の反応にかまわず自分のことばかり話してしまう、など)、言語性に頼らないコミュニケーションを理解することが難しい(ジェスチャーや表情を読み取れない、自身も表情やジェスチャー、アイコンタクトが乏しい)、対人関係を結んだり維持したりすることが難しい(友人をつくる,様々な状況に適応した行動をとる)、などが挙げられます。多くの人が、「それは自分も感じたことがある…」と思われると思います。これらのコミュニケーションスキルは年齢に応じて発達していくもので、個人差も大きいです。また、もちろん文化や言語、周囲の人間関係などによって大きな影響を受けます。程度の問題、困り感の強弱によって症状と見なされるかどうかが変化し、まさにスペトラムと言えます。

ASDの主要症状の2つ目である「行動・興味・活動の限局や反復」は、もう少しイメージしやすいかと思います。常同的または反復的な動作や話し方(小さいお子さんだと、繰り返し手を叩いたりひらひらさせたりする、言葉をオウム返しにする、おもちゃを並べること自体を楽しむ)、日常生活で見られるこだわり(食事や服の小さな変化にストレスを感じる)、特異的なものに執着する(特定のものに固執してずっと見続けることを好む)、などが挙げられます。また、副症状的なものとして感覚過敏(味覚、嗅覚、触覚などが過敏で、通常の人では普通に感じられることがとても不快に感じる)が挙げられ、配慮が必要なことがあります。

ASDにはこのように多種多様な症状が含まれ、困りごとも患者さんごとに異なります。また、年齢、文化、環境に応じて求められることが異なったり、発達段階が変化していくことも、継続的な診断やサポートが必要である理由です。次回は神経発達症の一つ、ADHDについて述べていきたいと思います。

医師 佐渡 めぐみ