ラッフルズホスピタル近くに亀甲模様の高層ビルがあります。このビルを見ると、学生時代に角膜内皮細胞はなぜ「六角形」なのか、講義で熱く語られる眼科教授がおられたのを思いだします。もう17年前の眼科講義の1コマにすぎませんが、印象的だったのでご紹介したいと思います。
角膜内皮細胞は綺麗な「六角形」をしています。では、どうして「六角形」なのか。自然界では、同種の動物が平和に暮らす安定した縄張りの形が「六角形」なのだそうです。それを証明するものとして、水鳥の巣をバラバラに配置して最初は大きさや形が違っても、最後にはきれいな六角形に縄張りが仕切られていくという内容のものが昔の論文発表があるそうです。
角膜内皮細胞も動物の縄張りと同じように、細胞が傷ついて脱落したときに、周りの細胞の大きさや形を変化させ補い、その後時間をかけてきれいな同じ大きさの六角形に変化していくそうです。また、角膜内皮細胞は、六角形であるが故に効率よく角膜が濁らないように水を汲みだすこともできるそうです。
当時はなるほどなと思いました。
人体では他に肝臓にも「六角形」は存在します。顕微鏡で観察すると細胞の集合体の組織(肝小葉)が「六角形」に配列しています。これも、再生能力の優れた、また機能面でも最大効率と効果を発揮できる構造であることを疑う余地はありません。
どうですか?六角形に自然の神秘を感じませんか?
医師 佐野 智彦