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眼科よもやま話 大人の視力回復治療 ―LASIKとICL―

本日は大人向けの視力回復治療、LASIKとICLについての話題です。世界の近視人口は2020年時点で約26億人と推定されており、2050年には世界人口の約半数にあたる50億人近くまで増加するという試算が示されています。コンタクトレンズや眼鏡のどちらかをご使用中の方は多いのですが、何歳になっても裸眼で過ごすことへの憧れがあるのではないでしょうか。今回は主に老眼が発症していない20代、30代対象の選択肢として、LASIK(LASEKも含む)とICLについてお伝えします。
2000年にレーザー近視矯正手術が厚労省に認可されましたが、当初の目論見とは裏腹にLASIK患者数は低迷しました。2004年頃に大手美容系クリニックがLASIK業界に参入し、低価格かつフェムトセカンドレーザーを用いた負担の少ないLASIKが代頭し、所謂LASIKバブルが到来しました。
大手のLASIKクリニックでは平日でも1日300名以上の方が手術を受けられ、術前後の待合室も常に満席で空前のブームとなりました。2008年頃にリーマンショックが起こると同時にLASIK件数は減少基調となり、2012年にはピーク時の約半数まで減りました。その後、手術件数は減少したものの近視矯正治療としては術後経過がとても良好でしたので現在でも消滅することはなく世界中でLASIK手術は施行されています。LASIKは近視の度数に応じて角膜をレーザーで削り視力を回復させるのですが、特に強度近視の方は角膜切除量が多くなるため術後にハローグレア(光の散乱現象)や角膜拡張症(ケラトエクタジア)という眼病のリスクが高くなります。また経年とともに近視の戻り現象が生じて視力が少しずつ低下する方もいます。そこで2010年2月に厚労省の認可を受けたのがICL手術です。コンタクトレンズを眼内に設置するという手術ですが、ドライアイや近視の戻りのリスクが低く、コンタクトレンズを眼内から除去すれば元の目に戻るという可逆性の面でも安心感のある治療です。
LASIK、ICL共に術前検査でしっかりと適応不適応を判断すれば、眼科学としては確立された安全性の高い手術と言えます。目覚めてすぐにコンタクトレンズをしているかのような視力を体験できるので、視力で悩んでいる方々にとって満足度が高く感動的な治療です。ご興味のあるかたは個別データを解析して治療適応についてアドバイスいたしますので眼科を受診していただければと思います。

医師 高橋 宏和