母乳には栄養学的、免疫学的、精神的そして経済面にも利点があります。子育てが理論的に考えられている風潮の中で、母乳を与えることは強い親子の結びつきであることから、母乳栄養をすすめていくというのが現在の考え方です。
母乳を飲ませながら寝かせたり、夜泣きの時に母乳を飲ませることは古くから行われていることで、一般の育児書にも飲ませていいと記載されています。ところが、母乳を幼児になっても飲ませていると虫歯になりやすいといわれています。そこでお母さんたちはどうして良いものやらと悩む方がいらっしゃいます。
まず今回はなぜ虫歯になるのかを理解していただければと思います。乳幼児は母乳を飲むときに舌を突き出し、乳首を上顎に押し付けてしごいて飲むので、上の前歯に母乳が付着しやすくなります。したがって、飲みながら眠ると母乳が上の前歯の周囲に停滞し、しかも夜間には唾液の分泌が減少するので虫歯になりやすくなります。
一方、下の前歯は舌に覆われているので母乳の付着は少なく、さらに唾液によっても洗い流される部位なので虫歯になりにくくなっています。ここで重要なのが母乳そのものは虫歯の直接の原因ではありません。お口のケアが悪くてプラ─クがたまり、母乳と食物残渣がお口に残っていると虫歯になるリスクがとても高くなります。
歯科医師 伊藤 明雄