今回は、最近日本において増加傾向であるといわれる、逆流性食道炎についてお話しします。
逆流性食道炎とは?
逆流性食道炎とは、胃の内容物が食道内に長時間にわたり逆流・停滞することにより、食道に炎症が起き、びらんや潰瘍が生じる状態のことです。
どうして炎症が起こるのか?
胃酸は強酸性です。食道と胃のつなぎ目は本来狭くなっており、胃の内容物が逆流しにくいようになっているのですが、肥満などによりこの部分がゆるくなってしまうと、胃内容物が逆流して炎症を起こします。
症状は?
胸焼けや?酸(すっぱい液体が口まで上がってきてげっぷが出ること)が主症状ですが、腹部膨満感、喉の不快感、胸痛、食物がつかえる感じなどの症状をきたします。
長引く咳の原因となることもあります。なお、逆流性食道炎によって食道の粘膜が変化し、食道がんの原因になる可能性があります。
診断はどうやってつける?
上部消化管内視鏡(胃カメラ)で食道の粘膜を観察することで診断を確定します。残念ながら、バリウムによる検査(胃透視)では診断が難しいことがあります。
治療は?
治療は生活・食事指導と薬物療法が2本の柱となります。
生活習慣の改善としては、肥満の改善、禁煙、アルコールを減らすこと、寝るときには上半身を高くすること、腹圧を増大させるような締め付けの強い衣類は身につけないことなどがあげられます。
食事に関しては、一度に食べ過ぎないこと、脂肪分やタンパク質の多い食事をとりすぎないこと、カフェインの摂取を減らすことなどがあります。また、甘いお菓子や香辛料、酸味の強い果物などは胃酸を増やしたり胸やけの症状を悪くしたりすることがありますので、とりすぎないようにしましょう。
薬物治療としては、胃酸を抑える薬を内服します。たいていの場合は薬をはじめると症状が速やかに改善しますが、薬をやめると症状が再燃することもあり、長期的に薬を飲み続けていただくこともあります。
上記の治療で十分な効果が得られなかった場合、外科的手術を行うこともあります。
なお、逆流性食道炎と症状の似た病気として、狭心症や食道がんといった重篤な病気もあります。気になる症状のある方は、一度病院を受診されることをお勧めいたします。
医師 堀部 大輔