1 麻しんは日本だけの出来事ではない?
先月の沖縄県で台湾からの旅行者の麻しん(はしか)を契機として、沖縄県で麻しん患者さんが急増し、その後も他の都道府県への広がりをみせニュースになっています。
しかし、シンガポールは日本から離れているからと安心してはいけません。世界保健機関WHOからの世界の麻しん報告によると、上位10位中にアジア6国(1位インド、5位パキスタン、6位インドネシア、8位フィリピン、9位中国、10位マレーシア)がランクインしていて、うち2国はなんと隣国のインドネシアとマレーシアなのです。
2 麻しんの症状は?
麻しんウイルスに感染すると初期は高熱と風邪のような症状が現れ、解熱したと思ったら再度高熱と発疹が出現します。1,000人に1人の割合で致命的な事態に至ることもあり決して軽視できません。
初期の風邪症状の段階での診断は難しく、感染力が強く空気感染もするので、日頃から麻しんのワクチンを受けていることが、予防に最も有効です。
3 危険な年齢はお父さん、お母さん世代。予防接種の確認と接種を!
ワクチンを1回接種することで、95%以上の人が麻しんに対する免疫がつくと言われていますが、確実な免疫を得るためや、年数の経過と共に免疫の低下が起こるのを防ぐためには2回の接種がのぞましいとされています。
そこで、2006年(平成18年)以降、麻しんの定期予防接種は2回受けることになっています。しかし、1978年(昭和53年)の定期接種開始より前に生まれた方、定期接種となっても1回接種のみだった方の中に、十分な免疫をもっていない人が多く残っています。
つまり、麻しんにかかったことのない人で、来星前に赴任前ワクチンとして受けていなければ、現在の20~30歳代は受けていても1回、40歳代以上の方は受けていない可能性すらあります。危険な年齢は、まさにお父さん、お母さん世代なのです。
ワクチンの接種歴は、母子健康手帳で確認できます。ワクチン未接種や1回接種のみだという方は、ワクチン接種を検討してください。また、麻しんにかかったことがなく、ワクチンの接種歴が不明という方も、出張や旅行前に予防接種を受けておくことをおすすめします。
シンガポールでは、麻しん・おたふく・風しんの混合ワクチン(MMR)が受けられますので、一度医師にご相談ください。
医師 佐野 智彦