今回も「整形外科疾患シリーズ」を脱線して、医者同士の雑談、最近私が友人と話したことについて書くことにしました。
友人は言いました。「最近麻酔科医として思うこと。整形外科医で一番力量を問われるのは骨折手術だと思う。何故なら、2次元の画像を頭で正確に3次元に変換する能力を常に要求されるし、様々なパターンでのばらばらの骨片をひとつにまとめなければならない応用問題だから。だから骨折請け負い人の整形外科医を最近リスペクトしている」と。
・・・その通りだと私も思います!(笑)
そして友人は自身の仕事については、更にこう続けました。「麻酔導入→麻酔維持→抜管(喉に入れている呼吸補助のチューブを抜くこと=手術の終了)という、いわば、離陸→水平飛行→着陸の一連の流れが好きだから、この仕事をしている」と。確かに、そう言われれば麻酔科医とパイロットの仕事は似ています。そして時に深夜便もありますね・・・1日5便だってあり得ます・・・いつもありがとう、麻酔科の先生。(笑)
ちなみに私は、内科医はシャーロックホームズだと思っています。少ししかないデータから疾患を予想し、更なる調査(検査)をし、犯人(病気)を突き止める。なんだかカッコイイです!
では、先にもどって整形外科医のほうは一体どんな職業に似ているのでしょう?2次元を3次元にするという意味では、建築家。それに、大工さん。ネジなどの金属を使って修復するところや、ときに力仕事なところも似ています。セメントだって使います、整形外科医が使うのは骨セメントですが。
そして、日本特有の文化では、金継ぎ職人にも相通ずるところがあります。(注:「金継ぎ(きんつぎ)」とは、割れや欠け、ヒビなどの陶磁器の破損部分を漆によって接着し、金などの金属粉で装飾して仕上げる修復技法。 ウィキペディアより引用)
いったん壊れたものをまた元どおりに修復するという点では、整形外科医も同じです。それに、全く同じ骨折はこの世に二つとないのです、全く同じ壊れ方をする陶器がこの世に二つとないのと同じように。しかし、ここが金継ぎ職人の素晴らしいところだと思うのですが、彼らの場合には、陶器は「壊れる前より美しくなっている」。ここが整形外科の仕事とは決定的に違う点です。しかし、そんな技術が可能だという事実は、私たちにとって何と勇気を与えてくれることでしょう。私たち整形外科医も将来そんなふうに、壊れたところを美しく修復できる日が来ればいいな、と思います。
欠けた月が、やがて元通りに満ちて明るい光を放つように。
ところで、この原稿がメルマガに載る週の9月13日はちょうど中秋の名月なのですね!・・・多くの人々にとって、月が綺麗な夜でありますように。
医師 長谷川 典子