腟カンジダは正式には性器カンジダ症と言い、男女ともに発症する可能性のある病気で腟や外陰部で発症する腟カンジダは女性の20%が経験するといわれています。性感染症として認識されていることが多いですが、実は性接触による感染は全体の約5%程度で、特に女性に発症する腟カンジダは、性接触以外での感染ケースが多く見られます。
腟カンジダの原因についてです。
通常女性の腟内部では「デーデルライン桿菌」という乳酸菌が在中し、腟内の雑菌が繁殖するのを防いでいます。デーデルライン桿菌の自浄作用によって、通常ならカンジダ菌を保有していても発症することはありません。しかし何らかの影響を受けてデーデルライン桿菌の自浄作用が弱まってしまうと、カンジダ菌は腟内や外陰部で異常繁殖を起こし、腟カンジダを発症します。
デーデルライン桿菌の自浄作用を弱める原因には、ストレスやホルモンバランスの影響、体調不良による免疫力の低下、デリケートゾーンが蒸れることで雑菌が繁殖しやすい環境になる、抗生物質の服用によりデーデルライン桿菌の働きが弱まる、ビデの使用や刺激の強い洗浄でデーデルライン桿菌を減らしてしまう、などがあります。
腟カンジダの症状はおりものの増加、変化(ヨーグルト様、カッテージチーズ様、酒粕様)、外陰部や腟の掻痒感、灼熱感、排尿痛、性交痛、発疹、外陰部や腟に白い苔状の付着物が付く等があります。
最近は市販薬でも腟カンジダ用の薬が販売されていますが、腟カンジダと断定できない状態で薬を服用するのは危険です。原因が腟カンジダではないのに市販の腟カンジダ薬を服用した場合、耐性菌になったり重症化したりするケースもあります。
腟カンジダの治療は適切な処置や処方を受ければ初回の治療で完治するケースが多いです。一般的には腟錠やクリーム・軟こうなどを処方し治療します。
腟カンジダは軽症の場合、発症中でも自浄作用が正常な状態に復活し自然治癒するケースがあります。痒みやおりものの変化が改善され、通常通りに戻れば自然治癒したと判断できるでしょう。しかし、我慢できない程の痒みや痛みを感じるような重度の症状が出ている場合、自然治癒は難しいでしょう。自然治癒を目指して放置した結果、慢性化してしまう場合もあります。また、腟カンジダは発症し完治した人の約7割が再発を経験していると言われている程、再発率の高い病気です。
腟カンジダの再発を防ぐためにも、通気性の良い衣服を選ぶ、オリモノシートは極力使用しない、ビデなどによる過度な洗浄を控える、規則正しい生活や食事で健康な状態を維持する等、日々の生活の中で腟カンジダの再発リスクを下げるように心がけましょう。
当院では、腟カンジダの検査・治療を実施しておりますので、気になる症状がありましたらお気軽にご相談ください。
医師 長谷川 裕美子