グリム童話のシンデレラが本当は怖い話であることは知られている。現代のシンデレラは残酷な部分が削除され、ステキに改変されたおとぎ話だ。ディズニー版シンデレラは、小さい女の子にとって憧れの存在である。
日本への本帰国が決まったことに気持ちがついていけないという相談が増える時期となった。生活環境がガラッと変わることは不安なものである。今年は、コロナ感染が制御されているシンガポールから、感染で四苦八苦の日本に帰国することへの不安を抱く人も少なくない。シンガポールでの生活が平穏で充実していたと感じていたある患者さんは、本帰国はシンデレラの魔法がとける事と表現された。
シンデレラの話の一部が変わっても、お城の階段に残されたガラスの靴のくだりは変わらない。靴は王子様がシンデレラを探すための重要グッズである。しかし、１２時で魔法がとけたのになぜガラスの靴は消えないのかとか、残った片方だけのハイヒールでシンデレラはどうやって逃げたのかとか、古今東西、疑問が噴出している。私の娘も小さい時、「ガラスのくつなんて、はだしが見えて、変」と言い放った。日本に帰国してガラスの靴をやめることになるのは、案外、良いことないのかもしれない。
医師 日暮 真由美