私の医療コラムでは、これまでも私が面白いと思った論文を紹介させていただいておりますが、今回は大学での講義開始時刻と学生の成績の関係を調査した論文を紹介させていただきます(Early school start time may compromise academic success of university students.MIMS DOCTOR.MAY2023)。
この調査では23391人のシンガポールの大学生から講義の出席率や睡眠時間、学業成績などのデータを収集し、分析しています。
その結果、8時開始の講義は10時以降開始の講義に比べて出席率が大幅に低いということが指摘されています。例えば、10時開始の講義と比較して、8時開始の講義の出席率は11.1%低いとの結果でした。
次に、学生は講義が早朝に始まる日には昼寝をする傾向が高く、昼寝の頻度は講義開始時刻と関係していました。そして、学生たちは次の日の講義が早い場合でも就寝時間を早めることはせず、そのために睡眠時間が短くなる傾向があったとのことです。
また、早朝に講義を受ける日が多いことは、学業成績の低下と関連していました。午前中に講義を受けなかった生徒は、講義の頻度に関係なく、午前に講義を受けた生徒よりも成績がよく、午前中に講義がある日が多いほど成績が低下するという傾向がみられました。
これらの結果から著者らは、大学は早朝講義の義務化を再検討すべきだと提言しています。
考えてみれば当たり前の結果なのですが、それが綺麗にデータとして示されていることが興味深いです。また、最後の提言に関しても、日本でしたら学生の資質の問題にされそうなところを、システムの問題として指摘しているところに文化の違いが垣間見れて面白いと思いました。
医師 堀部 大輔