シンガポールの室内は1日中クーラーをつけているため湿度が下がり、その環境下で、パソコン、スマホや読書などをしていると、瞬きの回数が少なくなり、涙が蒸発し、ドライアイを引き起こします。涙は、外側から油層、ムチン層、水層からなり、それぞれの成分、または双方で異常をきたすと、涙が不安定になります。ドライアイにも様々な病態があり、涙の乾き方で区別した涙液層別診断(TFOD:Tear Film Oriented Diagnosis)を行うことで、最も眼表面を悪化させる涙液減少型ドライアイなど、そのドライアイがどんな病態なのかわかるようになり、それをもとに治療していく層別治療(TFOD:Tear Film Oriented Therapy)が主流になりました。
この層別治療に従い、水やムチンを増加させるジクアス点眼や、油成分の涙を増やすカチオノームを点眼することで、ドライアイ症状を改善していきますが、中にはなかなか点眼薬のみでは改善しないしつこいドライアイもあります。そのようなドライアイには、「涙点プラグ」が非常に効果があります。涙は、上まぶたの外側(目尻の上側)に涙腺という組織でつくられ、まぶたの下の淵を70%、上の淵を20%流れてゆき、残り10%が眼表面から蒸発するといわれています。その涙は、目頭にある涙点という配水路を通って、最終的に鼻の奥にながれていきます。点眼をすると苦味を感じるご経験されたことがあると思います。この涙点に蓋をするように、軟らかいシリコン製のプラグを挿入すると、涙が排水されなくなり、目の淵にたまり、ドライアイ症状が劇的に改善します。
目薬を頻回におこなっているドライアイの方など、ぜひ眼科までご相談ください。
医師 岡野 喜一朗