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胃炎・ピロリ菌からの胃がんリスク

胃がんは慢性胃炎から発生する病気の一つで、ヘリコバクターピロリ菌(以下ピロリ菌)感染の起った炎症粘膜から発生します。逆に、ピロリ菌の感染していない胃粘膜のがん発生は1%以下と稀です。そこで、「ピロリ菌を退治してしまえば、胃がんの人が減るのではないか」と、2013年2月から日本の保険診療で、ピロリ菌による慢性胃炎をきたしている人への除菌治療が開始されました。それまでは、胃がん、胃十二指腸潰瘍もしくは、ピロリ菌の関連する血液疾患を認めた人のみを保険診療対象としていました。そのため、2013年以前に健診(人間ドック)や一般診療で胃カメラを受けられた方、特に萎縮(いしゅく)性胃炎や慢性胃炎といった診断を受けている方は、現在行われているピロリ菌の検査や除菌治療を受けていない可能性がありますので注意してください。

ピロリ菌による慢性胃炎のことを萎縮性胃炎とも言います。この萎縮は20歳代から始まり長い年月をかけて胃全体に広がっていきます。萎縮がある人は、約10年の経過で約1割程度のがん発生リスクがあるとされ、また進展するほどリスクが上がる傾向があるようです。そのため、胃を直接観察する胃カメラはがんを見つけるだけでなく、萎縮の程度を診る、すなわち胃がんの発生リスクを予測するために、非常に重要な検査と言えます。萎縮が高度でリスクが高い場合は胃カメラの経過観察を年1回にするなどすれば、がんの早期での発見のチャンスになるかもしれません。

なお、胃炎をおこしているピロリ菌を退治することにより、胃がん発生リスクを減らせる可能性があります。「早期胃がんの治療後にピロリ菌を除菌した患者さんは、除菌をしなかった患者さんと比べ、3年以内に新しい胃がんが発生した人が約3分の1だった」と報告があります。残念ながら除菌のみで将来のがんリスクを0%にできるわけではありませんが、この除菌治療に胃がん予防効果があることは明らかですので、積極的に受けましょう。

医師 佐野 智彦