「2017年7月5日、マレーシアのボルネオ島で農村地域に住む3名が狂犬病に感染し6歳と4歳のきょうだいが死亡した」という悲しいニュースがありました。
狂犬病は、発症するとほぼ100%死亡します。狂犬病は狂犬病ウイルスに感染したイヌ、ネコおよびコウモリを含む野生動物に咬まれたり、引っ掻かれたりしてできた傷口からの侵入、および極めて稀に感染動物から出されたミストよる気道粘膜感染によっても発症することがあります。
マレーシアでは20年ぶりの狂犬病での死亡とのことですが、日本とシンガポールを除くアジア諸国は狂犬病発生がある感染リスク地域です。
(厚生労働省 狂犬病発生状況:http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/pdf/03.pdf)
シンガポールにいると旅行や出張で近隣諸国を訪れる機会が多いと思いますが、感染の予防として一番大事なことは、『動物にむやみに手を出さないこと』です。かわいい、きれい、小さいからといってウイルスをもっていないとは限りません。
渡航先で動物と接する機会が多いことが分かっている場合は、予防接種(暴露前接種)という方法があります。当院のワクチンは初回接種を0日として、7日目と21~28日目の3回接種となります。渡航前に計画的に予防接種を受けられるとよいでしょう。
なお、発生国で狂犬病の恐れのある動物に咬まれたら、まずは傷口を石鹸と水でよく洗い(口で吸いださない)、消毒液で消毒し、できるだけ早く(咬まれた当日)、現地の病院を受診してください。医師がWHOの基準に沿って暴露後ワクチンやグロブリンの必要性を判断するでしょう。
医師 佐野 智彦