シンガポールで胃カメラ(上部消化管内視鏡)をしていると、胃がんのリスクになる萎縮性(いしゅくせい)胃炎の方は非常に少なく、逆流性食道炎の方が若干多い印象を受けます。これは、日本で胃カメラをしていると、ほとんどの方に萎縮性胃炎がみられるのと対照的です。
萎縮性胃炎は幼児期からのピロリ菌持続感染によりおこります。この胃炎が少ないのは、来星されていて胃カメラを受ける世代が20~60歳台と日本に比べ若く、ピロリ菌の感染者が少ないためです。
一方、逆流性食道炎は広い世代にみられます。胃酸が食道へ逆流し、食道にただれや潰瘍を作る状態で、胃酸がしっかり出ていることが原因の一つになります。
ピロリ菌が胃の粘膜に広く萎縮を起こすと、胃酸の分泌を低下させます。逆に、ピロリ菌を退治すると、胃酸の分泌が回復して逆流性食道炎を起こすことがあります。
胃酸過多の逆流性食道炎と胃酸の少ないピロリ菌胃炎は逆の関係にあることがわかります。そう考えると、逆流性食道炎を多く感じるのは、ピロリ菌の感染者が少ないためかもしれません。
逆の関係なんて言うと、逆流性食道炎にピロリ菌は良いように思えてしまうかもしれませんが、ピロリ菌は胃がん、胃・十二指腸潰瘍、血液の病気などの重大な病気の原因になるので、発見したら退治することをお勧めします。
医師 佐野 智彦