そこに医者はいない
2023年12月5日
より身近になるモニタリング
2023年12月19日

ちょっと胡散臭かったB―SPOT 療法から、世界へ羽ばたくEATへ

慢性上咽頭炎、上咽頭擦過療法、B―SPOT療法、EAT・・・ほとんどの方には馴染みのない言葉だと思いますが、タイトルを見て敏感に反応された方も、一部にいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、そんなごく一部の方のためのお話です。
先日、日本人会クリニックの仲山先生も解説されていましたので、ご覧になってみてください。

B―SPOT療法という慢性上咽頭炎に対する治療を、いつ誰が考案して始めたのか、詳細はわかっていません。「B」は、鼻咽腔(Bi―inku)の「B」であり、日本で命名された治療法です。1960―70年代に脚光を浴びて広まりましたが、「万病に効く」という論調が当時の医師たちの懐疑心を招く結果となり、世の中に定着せずに衰退した時期がありました。慢性上咽頭炎の症状が、めまい、肩こりや頭痛など、いわゆる鼻やのどの症状以外にも多岐に渡ることが、万病に効くという誤解につながった原因と考えられます。私自身も以前は懐疑的な立場で、昔ながらの先生が民間療法のように行っているという、ややネガティブな印象でした。

このB―SPOT療法が、コロナ感染後遺症の一つである慢性上咽頭炎に対する治療として、近年再び脚光を浴びています。過去の歴史との違いは、現在ではそのメカニズムが研究され、学術的に解明されてきているという点です。それに伴い、この日本独自の治療を世界に発信すべく、名称も「EAT(Epipharyngeal Abrasive Therapy)、上咽頭擦過療法」へ変更されました。

今では私も、日々グリグリと患者さんの上咽頭を擦過しています。みなさん、苦悶の表情で耐えていらっしゃいますので、どうか効きますようにと、願いを込めてグリグリしております。患者さんには、ご自身でもよく調べて理解していただいてから、治療に取り組むようにしています。もしかして慢性上咽頭炎かも、と思う方はいつでもご相談ください。

医師 高木 太郎