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「恐怖」の鉄道病

「友達のNさんの話に依ると、私の此の病気―ほんとうに今想い出しても嫌な、不愉快な、そうして忌ま忌ましい、馬鹿々々しい此の病気は、Eisenbahnkrankheit(鉄道病)と名づける神経病の一種だろうと云う。(中略)汽車へ乗り込むや否や、ピーと汽笛が鳴って車輪ががたん、がたんと動き出すか出さないうちに、私の体中に瀰漫(びまん)して居る血管の脈搏(みゃくはく)は、さながら強烈なアルコールの刺戟(しげき)を受けた時の如く、一挙に脳天へ向って奔騰し始め、冷汗がだくだくと肌に湧いて、手足が悪寒(おかん)に襲われたように顫(ふる)えて来る。」
谷崎潤一郎 作 「恐怖」より抜粋

パニック障害は、100年前は鉄道病と呼ばれていた。短編小説「恐怖」は、谷崎潤一郎の鉄道病の実体験を元に書かれたとされる。現代では鉄道病の他に、バス病や飛行機病の人もいる。近い将来、宇宙ロケット病というのもきっと出てくるだろう。文明が進化しても、100年前と病気の本質は変わっていない。恐怖。

医師 日暮 真由美