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小児におけるCOVID-19ワ クチンの有効性

新型コロナウィルス(COVID-19)の流行が始まって、もう3年目となりました。この間、circuit breakerなどもありましたが、だいぶ状況は落ち着いてきており、コロナ前の生活に近づいているように思います。個人的には、この状況は各個人や政府の努力はもちろんですが、ワクチンの貢献度も大きいと思っています。
そんな折、2022年8月のThe New England Journal of Medicineに、シンガポールの研究者による、小児におけるワクチンの有効性の論文が掲載されたので紹介させていただきます。
(Sharon H. X. Tan. M.P.H.,Alex R. Cook, Ph. D., Derrick Heng, M.Phil., et al. Effectiveness of BNT162b2 Vaccine against Omicron in Chilidren 5 to 11 Yea
rs of Age)

この論文では、シンガポールの5-11歳の小児25万5936人を対象に、オミクロン株の流行が拡大していた2022年1月21日から2022年4月8日の間のPfizer-BioNTechワクチンの接種状況と感染の広がりを分析しています。
具体的な方法は、まず対象となる小児をワクチン未接種、部分接種(1回目接種後1日以上、2回目接種後6日以内)、
完全接種(2回目接種後7日以上)の3グループに分類し、それぞれのグループに関して
1 全てのCOVID-19感染、
2 PCRで確認されたCOVID-19感染、
3 COVID-19に関連した入院
の3つの事象の発生率を評価しました。そして、それぞれの事象の発生率比からワクチンの有効率を推定しました。

その結果、ワクチン未接種グループ(52043人)では1:16909人、2:2425人、3:146人、
部分接種グループ(30656人)では1:16006人、2:2089人、3:100人であり、
完全接種グループ(173237人)では1:20514人、2:828人、3:42人でした。

これらのデータから推定されるワクチンの有効率は
1 全てのCOVID-19感染に対しては部分接種で13.6%、完全接種で36.8%、
2 PCRで確認されたCOVID-19感染に対しては部分接種で24.3%、完全接種で65.3%、
3 COVID-19に関連した入院に対しては部分接種で42.3%、完全接種で82.7%となりました。

なお、この研究期間中にCOVID-19に起因する死亡は認められませんでした。

この結果から、著者らはPfizer-BioNTechワクチンはオミクロン株に対しても、小児のCOVID-19感染とそれに関連した入院を減らすのに役立ったと結論しています。
確かに、オミクロン株ではワクチンを接種していても感染する、いわゆるブレイクスルー感染が問題となっていたことを考えると、そんなに悪くないデータだと思います。
なお、2022年2月28日までの時点で、5-11歳の小児におけるワクチンの深刻な副反応の報告数は22件(すべてのワクチン接種の0.005%)とのことです。

現時点で5-11歳の小児のワクチン接種は強制ではないため、接種するかどうかは最終的には本人や保護者の意見次第となりますが、こういったデータが発表されることは、判断材料が増えるという意味で非常に有益だと思います。

医師 堀部 大輔