手軽な運動としてよく引き合いに出されるウォーキングですが、その効果はなかなか侮れないものがあり、高血圧の改善、肥満の改善、動脈硬化性疾患の予防、糖尿病予防などの効果があるとされています。また、ストレスの緩和にも役立つとされ、うつ病の予防効果が期待されています。では、実際のところウォーキングはうつ病の予防にどのくらい効果的なのでしょうか。これについて研究した論文がありましたのでご紹介いたします。(https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2024.51208)
筆者らは、すでに発表されている文献の中から、加速度センサーなどの器具を用いて客観的な1日の歩数を計測し、うつ病の診断または抑うつ症状との関連を評価したものを選出し、そのデータを用いて分析を行いました。選出された文献は33件で、そのうち27件が横断的研究(ある一定期間内のある特定の集団のデータを収集して調査する研究)、6件が縦断的研究(ある特定の集団に対して継続的な追跡調査を行う研究)であり、横断的研究の参加者が合計14260人、縦断的研究の参加者が合計78655人でした。
横断的研究の分析から、1日に5000歩以上歩く人は5000歩未満の人に比べて抑うつ症状が軽く、7500歩以上歩く人は7500歩未満の人と比較してうつ病の有病率が42%低いことが示されました。なお、さらに分析を進めたところ、少なくとも10000歩までは1日の歩数が多いほどうつ病のリスクが低いことも示されました。
また、縦断的研究の分析から、1日の歩数が1000歩増えるごとにうつ病の有病率は9%低下し、1日に7000歩以上歩く人はうつ病の有病率が7000歩未満の人と比べて31%低いことが示されました。これらの結果から筆者らは、毎日の歩数が多いほど抑うつ症状は少ないことが示唆されたと結論しています。さらに、1日の歩数を増やすことがうつ病を予防する効果があるかは、今後の研究で確認する必要があると述べています。以前から、運動がストレス解消につながることは言われていましたが、それが具体的な数字で示されたのは興味深いと思います。
1日10000歩はなかなか大変ですが、5000歩でしたらできそうな気がしますので、まずは“少し多めに歩く”ことを頑張ってみようかと思います。
医師 堀部 大輔